動画「PERにとらわれお金がパー」

次の動画リンクは「PERにとらわれお金がパー ~PER①PERって何?~」の後半部分から再生されます。

 

PERの使い方

PERの単位は「○☓倍」という形を取ります。
例えば、株価が1,000円で、一年間の一株あたり利益が10円であれば、1,000÷10で「PERは100倍である」ということになります。

一株あたりの利益というのは一年間の利益ですから、PERが100倍であるということは、今の株価は100年分の利益と等しいと言うこともできるわけです。
もしも、株価が同じ1,000円で、一株あたり利益が100円であれば、1,000÷100でPERは10倍です。

株価が同じ1,000円の2銘柄で、一方の利益が一株あたり10円で、もう一方が100円であれば、どちらが割安、つまりお買い得であるかは明らかです。
どちらの株価も1,000円であり同じ値段なのですから、利益が100円ある方が10円しかない方よりもお買い得に決まっています。

このように、PERという指標は数字が小さい方が割安といえるわけです。

PERを出すときの「利益」とは「一年間の利益」を用います。

すなわち、PERは「現在の株価が一年間の利益の何倍になっているか」という数値なのです。言い換えれば、PERが何倍であるかということは、「現在の株価が何年分の一株あたり利益と同じか」ということになります。

例えば、仮にPERが5倍の銘柄があったとしましょう。これは、もし今の利益の額がそのまま出続けた場合は、これからの5年間の利益の合計が現在の株価と等しいことを意味します。PERが5倍であるということは、現在の一株あたり利益の5倍の値段で株が取引されているということになります。

株価が利益の5倍というこの状態を株価からではなく利益の方から表現すると、現在の一株あたり利益額は株価の20%に当たる、という言い方もできます。
5:1=5倍、1:5=0.2つまり20% というわけです。小学校でならった逆数の関係ですね。

このように、PER5倍の株式は年率20%の収益を稼いでいるということと同じですから、現在の収益以外の他の要素を無視した場合、単純に考えれば極めて有望な投資対象と言って良いと思います。

繰り返しになりますが、PERが仮に5倍であれば、つまり株価が一株あたりの利益の5倍であれば、一株あたりの利益の方から見れば株価の20%の利益が出ているということになります。

成長株の配当は高いほうが良い?

少し脇道にそれますが、20%の利益の中からどのくらいを配当にまわし、残りを会社の資産として残すかかという問題もあります。

仮に、毎年全てを配当として投資家に支払ってしまい、その後の株価も利益水準も5年間変化がなかったとしますと、5年間で現在の株価と同じ額を配当として受け取ることになります。投資家は年20%の配当を5年分受け取り、株価に変化はありませんから、資産は2倍、すなわち200%となります。配当でまるまる元を取った上で、株価に変化がないのですから。

逆に全く配当をせずに20%分の利益を全て会社に残すとします。そして、投資家は配当を受け取らなかった代わりに、配当しなかった分、会社に資産が残っているわけですから、株価のほうが年間20%上昇し、利益率も年間20%を維持し続けるとします。そうすると、株価も利益も同じように20%ずつ上昇するので、この場合も5年間PERの変化はありません。しかし、複利効果が働きますから、利益を全て配当として投資家に支払ってしまうケースよりも、全てを会社に残した上で、その残した資金も使って利益を生み出す場合のほうが投資家の利益は大きく、249%となります。

 

計算式で表してみましょう。

100%+20%+20%+20%+20%+20%=200%
120%×120%×120%×120%×120%=249%

要するに、単に配当の水準が高い方がいいということは言えず、利益成長できる会社については配当などしないで成長に回してもらったほうが投資家のためになるということです。

かつて、マイクロソフトはずっと無配株でしたが、配当を開始するというニュースを聞いて「ああ、マイクロソフトも成長株の時代が終わってしまったのだな」と感じたことがあります。
配当についての考え方は、今回のテーマとはズレますので、また別の機会に取り上げたいと思います。

PERを用いる際の注意点

PER5倍のような銘柄は、一見、非常に有望で割安であるように見えます。しかし、それには現在の収益が将来も続く、という前提が必要です。しかし、一見有望に見える条件の裏に何かが隠されている、ということは実生活でもありがちなことです。例えるならば、一見、実に理想的な男性にプロポーズされたと思い舞い上がっていたら、結婚詐欺にあってしまった、というようなこともないとは言えません。

いつでも、誰でも、現在の価格で購入できて、しかも、非常に割安である、ということの裏に、何か理由があるのではないかな?と疑ってみることが必要です。

収益は短期で激変する

前述の通り、PERは「現在の」「収益」に関連付けられた指標です。

この「収益」というのは、ごく短期間で激変する可能性がある、という特徴があります。いま見えている収益予想はあくまでも現在の会社の状況の反映です。しかし、例えばある製薬会社の主力商品である薬に重大な副作用があることが発覚して、巨額の損害賠償責任を負うことになったとしますと、そのような事実が明らかになる前と後とで収益は非連続的に大きく変化してしまいます。場合によっては、今までの例のように株価の20%の利益を上げているような絶好調な状態から、一気に赤字に転落することだってあり得るのです。製薬会社に限らず、多かれ少なかれ、このようなことはあらゆる会社に起こりうることです。

PERの数値を参考にする場合は、このようにごく短期間に数値が激変する可能性があることを肝に銘ずる必要があります。

株は将来性が命

株は将来性が命です。現在と未来の違いによって、株価の値動きが生まれます。ですから、現在の姿だけを反映しているPERを重視しすぎることは危険なのです。

車を運転するときは、常に先を見ていないと事故を招きます。「あぁ子供が歩道でボール遊びをしているな」、「足元のおぼつかないお年寄りが脇を歩いているな」、「大きなトラックが少し先のカーブで対向車線からはみ出しているな」など、状況は刻々と変わるものです。それを軽視し、既に起こったことや現在の状況だけを重視することは、言ってみればバックミラーだけを見て前を見ないで運転しているようなものです

もちろんPERが役に立たないと言っているわけではありません。非常に役に立つ指標であることは間違いありません。ただし、あくまでも現在見えている「収益」だけを評価する数値である、ということを理解した上で使いましょう、ということです。

本稿のテーマであるPERは、株の取引を始める方が最初に覚える投資指標ではないかと思います。割安、割高の度合いを数字で見ることができる有益な指標だと考えがちです。しかし、落とし穴が多い指標でもあるのです。

しっかりと理解するまでは、PERなど下手に知らない方がいいと思うくらいです。

この続きはまた別の機会にお伝えしたいと思います。

 

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